フランスの教育(フレネ教育)

日本の学習指導要領の改訂がニュースで取り上げられ、学校教育について考えさせられることが多くなっています。そんな中、ヨーロッパでは日本とは根本的に異なる学校の形式が多くあります。その中で今回は、フランスの「フレネ教育」を取り上げてみたいと思います。

 

フレネ教育とは

理念

フレネ教育は、フラン スの教育者セレ スタン・フレネが考案した教育方法です。フレネは子どもたちの自由な表現とコミュニケーション、子どもの興味を土台に据えた教育、子どもたちが自ら「仕事」を組織していく教育、子どもたち一人ひとりの学習リズムに対応した教育、子どもたちの自治による学級や学校の組織化、個性化と協同化(協働化)などを追究しました。

個別学習

フレネ教育では日本のように先生がクラスの全員に同じ内容を教えるのではなく、子供達が自分の学習レベルに合わせた教材を選んで、個別に勉強するのです。また、子供たちは自分自身で学習する内容の計画を立てて、主体的に学習を進めていきます。

子供たちは自分のペースで学習することができるので理解が深まり、勉強を強要されていると感じません。

主体的に学ぶことを習慣付けられた子供たちは、社会に出ても常に勉強を続けていくことができます。これは、教育学者の苫野一徳さんも指摘するように、今後の急激な社会の変化に対応するために重要な能力だと考えられます。

異年齢学級

フレネ教育を取り入れた学校は、違う学年の子供たちが同じ教室で学びます。この教室で子供たちは、年上の生徒から教えてもらったり年下の生徒に教えてあげたりすることで学習の理解が深まり、実社会と同じような多様性を感じることができます。

日本のように同一年齢の子供だけの多様性の少ない教室では、その均質性から外れることでいじめが発生することもあります。しかし色々な年齢の子供が同じ教室にいる場合、その様ないじめや、同調圧力もそこまで働かないのかもしれません。

 

フレネ教育の授業内容

「書くこと」を重要視

フレネ教育では「書くこと」を大切にします。具体的には、子供たちは「朝の文章」と呼ばれる自分の創作を書くことから一日を始めます。何でも自分の好きなことをノートに書き、それを「学校新聞」に掲載するのです。

ある学校では、個別学習で日常的にパソコンを活用しているので、生徒たちはいつでも検索や文字の入力ができ、「朝の文章」で書いたものをパソコンに入力して「学校新聞」を作ります。

また、「単語探し」といって、自分たちが探した単語を持ち寄って皆で書いて覚えたりします。

計画を立てる

子供達は自分の学習や学校での活動の計画を立てます。この「仕事の計画」を元に、学習や活動の自己運営を行なうのです。

決められた期間の終わりには、「仕事の計画」の評価を行います。これにより子供たちは自己管理や選択の大切さを学ぶことができます。

「自由研究の発表」

子供たちは自分の興味のあるテーマについて、調べてそれを発表します。これは、個人の興味や学習の成果を皆で共有することができると同時に、学習のモチベーションにも繋がるのでしょう。

この自由研究の発表は、学校によって「アルバム」としてまとめられることもあるそうです。発表者は自分で制作したアルバムと写真や絵を使いながら発表し、そのあとクラスの全員で感想を言ったり、質問をしたりします。

クラスの皆から感想を言われたり、質問されることで、新たな気づきややる気が湧いてくることが容易に想像できます。

聞き手は、発表者の話を真剣に聞くことが求められ、自分の言葉で感想を言うこともとても良い学びとなります。また、「アルバム」を「学校新聞」に載せたりもするそうです。

 

子供による学校運営

学校にもよりますが、「集会」が一週間に一回開かれます。子供たちは「集会」で話したい事柄を随時用紙に記入して、それを元に議長となった子供が集会を進行します。自由な発言は認められず、挙手による発言と、議長の進行に従うことが厳格に求められ、これは生徒に限られません。

子供たちは自分たちのより良い学校生活の為に、真剣に考え発言するのです。

「集会」では新しく学校の規則が決められたり、学校によっては、楽器の演奏の場になったり、個人の発表の場になったりもするようです。

 

教室

個別学習を基本にすることもあり、日本の学校のように全員が黒板に向かって机を並べることはありません。子どもたちは、クラス全体での活動やグループごとでの活動以外の時間は、自分の「仕事の計画」に従っているので、一人ひとりのリズムに応じた学習や活動を展開しているわけです。

そこで必要になるのが、ひとりひとりの学習や活動に対応できる教材や「コーナー」です。子供は自分の計画に合わせて様々なコーナーを渡り歩き、学習を進めます。

「自由研究の発表」の時間は、子供たちが発表者を囲んで円形に座ります。

 

まとめ

以上が「フレネ教育」の概要です。一応断っておくと、フランスでは全てこのような教育が行われているわけではありません。しかし、オランダの「イエナプラン」同様に、これからの社会を考えると、日本の子供たちにもしてあげたいなと思わせる教育であります。

「フレネ教育」をするためには、個別学習に対応した優れた「教材」が必要不可欠となり、学習指導要領の関係もあり、今の日本の学校でこの方式をとることは難しいと思います。

ただ、「フレネ教育」から実施可能な要素を取り出して子供の教育をより良いものにすることは不可能ではないですね。

 

今回はフランスの「フレネ教育」について

フランスの「ビズ学校」における異年齢学級の実践-「フレネ教育」の導入の視点からの考察を中心に- 坂本明美

フランスの公立小学校の異年齢学級において「フレネ技術」を導入した、フィリップ・ラミの教育実践 ―「マリー・キュリー学校」と「モーホガール初等学校」における実践を中心に―  坂本明美

の内容を参考にさせていただきました。