資格試験に役立つ勉強法4「生成する」

学びを長期記憶に定着させるためには「望ましい困難」が必要だということを前回書きましたが、他にどんなものがあるのでしょうか。一級建築士、二級建築士試験等の資格試験にも役立つ「望ましい困難」を紹介します。

 

自分の中から「生成する」

「想起」は新しい知識を少し忘れたころに思い出す行為でしたが、知識や解法を教えられずに問題を解く場合もあります。これも、ほどほどの難しさであれば「望ましい困難」になるのです。

教えられていない問題の解法を、自分の知識の中から作り出そうとすることを「生成」と言います。例え答えが分からなかったとしても、諦めずに問題を解こうとすることが、より長期記憶への定着に効果があるとする研究が複数あります。

また、新しく得た知識をこれまでの自分の知識をもとに、自分の言葉で言いなおすことも生成です。「生成する」ことで、関連した知識同士の結びつきを強めます。

 

ワーキングメモリ

人の脳には、問題を解くために必要な容量があります。これを「ワーキングメモリ」といい、個人差はあるものの、容量の大きさは知能指数の高さにほぼ比例するそうです。

この「ワーキングメモリ」は、テストなどで不安を感じていると、その不安に「ワーキングメモリ」を割いてしまい、問題を解くために必要な容量が不足してしまうのです。

2012年に論文誌に発表された研究で、フランスの6年生に難しいアナグラムの問題をだしました。皆がその問題を解けずに失敗した後、半数の生徒には「難しさは学習の大事な要素であり、間違って当然で、自転車の乗り始めのように練習が役に立つ」という話を10分します。残りの半数には、どうやって問題を解こうとしたのかだけ聞き、その後両グループにワーキングメモリの使い方を調べる難しいテストを受けさせました。

その結果、間違いは当然と言われた半数の児童について、ワーキングメモリが有効に活用されていることがわかりました。難しいと悩んだり、間違える不安にワーキングメモリを使用しないで済んだのです。

この研究は、後に行われた他の実験でも実証されました。難しさは無能感を引き出すので、学習の妨げとなることもあるのです。しかし、難しさが学習には必要だと理解し、ワーキングメモリの浪費を抑えることで、「生成する」学習法は「望ましい困難」となります。

 

資格試験での活用

「生成する」学習法で大切なことは、失敗することではありません。失敗を恐れずにチャレンジし、自分の持っている力で問題を解こうと努力することが、記憶を定着させるのです。

また、資格試験の本番で注意するべきことは、「ワーキングメモリ」の無駄遣いをしてしまうような、不安感を持たないことだとわかります。間違いを恐れたり、失敗するかもと悩んだり、自分の監視に「ワーキングメモリ」を割かれないように意識し、集中力を高めて本番に臨んで下さい。

 

ここで紹介した内容は、「使える脳の鍛え方 ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、マーク・マクダニエル 依田卓巳訳 NTT出版」を参考にしています。興味のある方は非常に良い本なのでお勧めします。