資格試験に役立つ勉強法3「多様な練習」

前回の記事で、一つの教科や単元を集中的に学習するよりも、間隔をあけることが重要だということを紹介しました。

では、間隔をあけたことによって生じた時間は、何も勉強してはいけないのかという疑問がわきます。実は違う教科や内容を勉強すればいいのですが、何となく効率が悪いように思う人もいるでしょう。そんな疑問に対する回答です。

 

種類を混ぜた練習

Instructional Science 35(2007)に掲載された研究では、4種類の立体の体積の求め方を学んだ学生を2つのグループに分けました。その後、一方のグループには立体の種類毎にまとまった練習問題を解かせ、もう一方のグループには同じ問題ですが、順不同にされた練習問題を解かせます。

立体の種類毎に練習問題を解いたグループは89%の正答率であり、順不同にされた練習問題を解いたグループは60%でした。この結果は「集中学習」をすることが、その時点では良い成績を残せることを示しています。

しかし一週間後のテストでは、種類毎の練習問題のグループは20%の正答率で、順不同の練習問題のグループは63%の正答率という驚きの結果が出ています。

 

内容に変化をつけた練習

もう一つ、興味深い研究があります。Perceptual and Motor Skills 46(1978)の論文です。8歳の児童が玉入れの練習をします。一つのグループは90cm離れた位置からの練習。もう一つのグループは60cmと120cm離れた位置の二種類の練習をしました。

1、2週間後、90cm離れた位置からの玉入れのテストを行った結果、圧倒的に上手くできたのは、90cmからの練習を全く行わなかったグループでした。

これは運動に関しての研究ですが、記憶についても同様の結果になることが分かっているそうです。

 

望ましい困難

上記の二つの研究から、練習問題を解く際は、種類や内容に変化をつけた「多様な練習」をすることが必要だとわかります。「多様な練習」を行っている最中は、問題を解けるようになったという実感が薄く、やり難さを感じると思います。

しかし、「想起する」「間隔をあける」「多様な練習」全てに共通するのですが、思い出したり学習したりすることが困難であればあるほど、長期記憶に定着できるのです。これを「望ましい困難」と言います。

「望ましい困難」の例として、文字のフォントが読みにくい、文章中の単語が抜けている、教科書の順序と授業の進め方が違う等、そんなことでも長期記憶に定着しやすいのです。困難だからといっても、克服できないようなものは「望ましくない」ので注意が必要です。

 

「多様な練習」をすることで、「望ましい困難」ができると同時に、どの問題にどの解法を使用するのかといった判断力が養われるので、資格試験の際には是非取り入れたいものですね。

 

ここで紹介した内容は、「使える脳の鍛え方 ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、マーク・マクダニエル 依田卓巳訳 NTT出版」を参考にしています。興味のある方は非常に良い本なのでお勧めします。