「こたつソファ」問題を考える

 

ソファの前にこたつがあり、ソファを背もたれにしてこたつに入る。そんなお宅もあると思いますが、この光景をあり得ないと言う人もいます。今回はこの問題について考えてみます。

 

ソファの作り手としては

ソファの前のこたつを「あり得ない」と言い放ったのは、ある家具屋さんの社長です。椅子に座るヨーロッパ型の生活を研究し、椅子やソファを作る身として、ソファに座らず床に座っていることが信じられないのでしょう。

ソファとこたつを併用する人の気持ちになると、こたつは暖かいし、背もたれとしてソファを使えるし、なんだか囲まれる居心地の良さを感じられる。疲れたらソファとこたつを行ったり来たりと、確かに機能的なのかもしれません。

ではこの状態になるために、どのような過程があったのかを考えます。

 

こたつソファ併用の過程

 

ダイニングテーブルとソファ

ダイニングルームとリビングルームがあり、ダイニングルームとキッチンが繋がっているような家は想像がつくでしょう。オープンキッチンもこの形ですし、一昔前のキッチンが広くとられてダイニングテーブルがそこに納まる間取りも同様の形式です。

新築で一番多い間取りは、一体のリビングルームとダイニングルームがあり、オープンキッチンとなっている形式でしょう。

これらの形式はどれも、ダイニングテーブルで食事をすることを基本に考えられています。ダイニングテーブルの椅子に座る横で床に座るというのは、ちぐはぐな感じがすると思いますが、これは目線の高さが違いすぎるためです。

目線の高さが違うと会話が成立し辛くなるので、あえてキッチンを一段下げ、キッチンに立った人と椅子に座った人の目線の高さを揃えるような工夫をしたりします。

必然的に、ダイニングテーブルを設置する場合は、ソファを同時に考えることが多くなります。ダイニングテーブル+ソファで、ヨーロッパ・アメリカ風の生活を思い描いて、これらを揃える人もいるでしょう。

ダイニングルームからリビングルームへ

過去の記事、「ダイニングルームについて考える」を参照にしてほしいのですが、ダイニングルームは、放っておくと物が集まりやすいです。

新生活から歳月が経つと物も増え、ダイニングテーブルの上は、調味料や本、台所用品に占拠された状態となるお宅もあります。ダイニングテーブルで食事がとれない状態です。この結果、比較的物がないリビングルームのテーブルに食事の場が移ってきます。つまりソファの前のテーブルで食事をするのです。

ソファと食事用の椅子は構造が全く違うので、ソファでの食事はとても難しい。となれば、床に座ってご飯を食べます。

この流れで、こたつまではそう遠くない道のりです。

もう一つの道筋

もう一つの流れは、寒さです。こたつの暖かさを知っている人であれば、ソファに座ってくつろいでいる時に、何だか肌寒さを感じることが多いでしょう。勿論暖房はかけていますが、こればっかりはこたつの快適さには勝てないのかもしれません。

ソファの前にホットカーペットを敷いて、この肌寒さに対応しようとしても、いつの間にかソファを背もたれにホットカーペットに座っている。なんてこともあり、こたつへ向かうベクトル(誘惑)は、以外に強いものなのかもしれません。

 

すっきりした部屋を目指すなら

前述の家具屋さんの社長は「テーブルで食事をすることを当たり前の人間にとって、床に座って食事をとっている姿は、さもしく見えます。これは、日本人が、床にお皿を置いて食事をとっている人の姿を見た時と同じです。」と言っています。

これはちょっと衝撃的な発言ですが、「こたつソファ」の併用が、部屋のすっきしりた感じをそこねてしまうことは事実だと思います。「ダイニングルームについて考える」でも述べましたが、ダイニングルームは食事をとる部屋であり、リビングルームは家族団欒やくつろぐ為のへやです。この区別をきちんとつけることが重要だと思います。

「ソファに食べ物のカスが落ちて掃除が大変。」という言葉は、リビングルームはものを食べる部屋ではないとわかっていれば、出てこないのです。家族全員が、ソファに座ってものを食べないと認識していたら、掃除の手間がかからず、ソファにジュースをこぼす心配もなくなります。

「こたつソファ」をどうにかして抜け出したいが抜け出せない、と言う人には、ダイニングテーブルでご飯を食べて、ソファでは食べないことをお勧めします。