自動でふたが開いたり、自動で水を流したり、センサー付きのトイレが広く普及しています。そんな高機能なトイレで発生したちょっとした問題についての話です。
夜に開く蓋
真夜中にトイレから音がする。どうやら大便器の蓋が自動で開閉する音のようです。その時、誰もトイレに入っておらず、少し前にトイレに入った人がいるわけでもありません。
考えられるのはセンサーの誤作動です。まあ、それなら仕方ないと思いながら寝てしまいます。
数日後、トイレに入り、便器に腰を腰掛けながらあたりを見渡したすと気が付きました。自動開閉の蓋が二つ。
二つの自動開閉蓋
一つ目の蓋は、パナソニック製大便器「アラウーノ」の蓋です。もう一つは、三菱製換気扇「とじピタ」の蓋です。
「とじピタ」は壁に設置する換気扇で、スイッチを入れると蓋が自動で開閉します。トイレについているこの「とじピタ」は人感センサーによって、トイレに人が入ると自動で排気を始め、人が出てからしばらく経つと蓋を閉めて排気を停止します。
この二つの自動開閉蓋の存在に気付いた瞬間に、ある仮説が生まれました。二つの蓋のセンサーがお互いの蓋の開閉動作を感知してしまっていたら。
流れとしては、
人がトイレに入り、アラウーノ・とじピタの蓋が開く
↓
人がトイレから出て、まずとじピタの蓋が閉まる
↓
次にアラウーノの蓋が閉まり、とじピタのセンサーがそれを感知して動作開始、蓋が開く。
↓
とじピタが一定時間の排気を終了して蓋を閉じる。その動きをアラウーノのセンサーが感知して蓋を開ける。
↓
以下ループ
検証
このループが完成しているとなると、大変面白いのですが、結論から言うと、アラウーノはとじピタの動きを感知していませんでした。
アラウーノのセンサーについて、以下パナソニックのWebサイトを参照させていただきました。
●人体検知センサーは、検知範囲に人が近づいたとき、その体温でできる温度差(4℃以上)を検知しています。
●人体検知センサーは、検知範囲や検知感度は調整することができません。
【注意】
夏場など高温下で、トイレルームの室温が体温と近くなる場合、人体検知センサーで検知することが
できず、便蓋が自動で開かないことがあります。
トイレルームの室温を下げるように換気して頂くか、リモコンの便座開閉ボタン操作で便蓋を上げて
ご使用ください。
※人体検知センサーは赤外線検知方式のため、室温が30℃を超えると人体検知をしにくくなります。
人体検知センサーの検知範囲、検知距離は下図を参照ください。
この説明を読む限り、温度差の生じないとじピタの蓋は、センサーにかからないということです。
因みに、とじピタのセンサーは、アラウーノの蓋の動きを感知して動作します。また、照明器具のセンサーも同様にアラウーノの蓋の動きを感知して自動点灯してしまいます。
再検証
興味本位で、近くにあった、とじピタの蓋と同じような材質の掃除機をトイレのドアの隙間から突っ込んでみました。掃除機の表面温度が室温と同程度だと仮定した場合、アラウーノは動作しないはずです。
しかし結果は、アラウーノが動作を開始しました。
この結果から、
1. アラウーノのセンサーは、ある基準以上の物体の大きさや、動きの大きさを感知する特性がある。
2. とじピタの位置が、アラウーノのセンサーの検知範囲外だった。
の2点が考えられます。
どちらの理由かは判断できませんが、とじピタの設置位置はセンサーの範囲外とするに越したことはありませんね。
「とじピタ」は蓋によって気密性を高め、作動時は蓋が開いているため、目視で排気を確認できるという優れた特徴をもっています。しかし、トイレに設置するのであれば、そもそも蓋の開閉のない換気扇を使用するべきかもしれません。気密性に関しては、パイプ内に電動の蓋を備えた製品もあります。
トイレは、便器、換気扇、照明器具と、センサーが密集しています。今回は各器具のループは発生していませんが、便器の蓋の動きによって換気扇と照明器具が余分な動作をしている点が確認されました。些細ですが、この問題をどう解決していくのか、メーカーと設計者の工夫が必要です。
最後に、夜中になぜセンサーが反応したのかは、全くわかりませんでした。